※写真は過去の公演より 撮影:荒井健
作品について

 この作品は東北の美しい自然を舞台に、いじめに苦しむ少年ユタが、天災によって現世で生きることが叶わなかった座敷わらしたちと出会い、彼らとの交流を通して、生命の尊さ、友情の大切さを学び、たくましく成長していく物語です。岩手・南部出身の作家、故・三浦哲郎さんの同名小説が出発点となっています。
 初演は1977年。以降、上演のたびに新たな工夫を加え、バージョンアップをしながら公演を重ねてきました。浅利慶太が手掛けたオリジナルミュージカルの中でも長い歴史を持った作品です。
 生前より浅利は本作の上演を強く望んでいました。演劇を通して“人生の感動”と“生きることの素晴らしさ”を届けたいという浅利の想いがつまった作品です。

ものがたり

 東北のとある山村“湯の花村”。父親を亡くした水島勇太は、東京から、母親の実家があるこの小さな村に引っ越してきた。しかし、村の子どもたちに馴染めず、いじめられてばかりいた。しかも皆、勇太を“ユウタ”ではなく、“ユタ”としか呼んでくれない。そんな彼の味方は、幼い弟の子守をしながら学校に通う同級生の小夜子と、寅吉じいさんだけ。勇太はいじめを受け続けるつらさと悲しみ、そして孤独に悩み、遂には自殺まで考えるようになる。
 ユタを気遣う寅吉は、地元に代々伝わる“座敷わらし”の話を教え、友達になってみろと勧める。そして、ある満月の夜、寅吉の言葉に従って、大黒柱のある旧家“銀林荘”の一室に泊まったユタは、五人の座敷わらしたちに出会う。皆、飢餓や間引きによって、この世で生きることが叶わなかった悲しい運命を背負っていた。弱音ばかり漏らすユタを、彼らは叱咤しつつも、生きることの素晴らしさを説く。
 “仲間たち”との友情とさまざまな試練を通じて、たくましく成長していくユタ。だがやがて、彼らとの別れの時がやってくる・・・。

愛すべきキャラクター “座敷わらし”

 “座敷わらし”とは、古くから東北地方に伝わる子供の精霊のこと。度重なる飢饉により「間引き」されたり、捨てたりされた子どもの霊が、生きることの叶わなかった悲しみと悔しさを背負い、現世を彷徨っているといわれています。劇中では5人の魅力的な座敷わらしたちが登場。ユタを厳しく、また温かく見守ります。
 
  
ペドロ
元禄八年の大飢饉の時、ぺんどろ沼で生まれたがすぐに死んでしまったためペドロと呼ばれている。座敷わらしたちの親分格で、ユタのために一肌脱ぐ頼もしい存在。小夜子に恋心を抱いている。
 
ダンジャ
天明三年の大飢饉の時、壇沢(だんざわがなまってダンジャ)という所で生まれたが、すぐに間引きされてペドロ一家の仲間入りとなった。哲学肌でいつも冷静なしっかり者の座敷わらし。
 
ゴンゾ
座敷わらしたちの中で唯一、生まれた時につけられた「権三」という名前を持っている。天保四年の大凶作の時、ろくな食べ物も食べられず飢え死にしたため、いつもお腹を空かせている。気が短く、少し乱暴者。
 
モンゼ
宝暦五年の大凶作で夜逃げした両親に、大きな家の門前に置き去りにされた。生きてほしいという両親の願いも虚しく、泣き入って気を失ったところをペドロに拾われた。仲間の中で一番小さく泣き虫の座敷わらし。
 
ヒノデロ
日之出楼という遊郭の遊女だった母親が、客と駆け落ちしてしまい、生まれたばかりのヒノデロはお乳ももらえず死んでしまった。白粉が大好きで言葉使いも女性的な優男の座敷わらし。

美しい響きをもった方言

 「南部弁の美しさを伝えたい」と浅利は稽古場で繰り返し語っていました。恩師の加藤道夫先生から、「もしも、東北弁が標準語だったら、日本の詩劇とオペラの完成はもう一世紀早くなっていたかもしれない。」と教えられたそうです。
 東北の農村を舞台とする本作品では、台詞に南部地方・岩手県二戸近辺で用いられる方言を採用しています。リズミカルで抑揚に富み、美しく柔らかい響きをもったこの言葉は、それ自体が音楽のようです。日本語がもつ美しさを改めて感じさせてくれるミュージカルです。

故・三木たかしさんの名曲の数々

 音楽を手掛けたのは「津軽海峡・冬景色」、「時の流れに身をまかせ」など多くのヒット曲を生んだ三木たかしさん。ミュージカルでも『夢から醒めた夢』や『ミュージカル李香蘭』など、数々の作品で作曲を担当し、心に残る名曲を残しています。この作品では、演歌や民謡の要素を盛り込み、日本的で親しみやすい音楽世界を創りあげています。劇中歌「友達はいいもんだ」はNHK「みんなのうた」に取り上げられ、また終幕に小夜子が歌う「夢をつづけて」は森進一さんがカバー。いずれも大きな話題となりました。特に、友情と連帯の大切さを謳った「友達はいいもんだ」は、小学校の歌集にも掲載されるなど、広く歌い継がれています。

公演について
公演スケジュールおよびチケットなどの詳細は順次発表いたします
どうぞお楽しみに