※写真は過去の公演より 撮影:荒井健
作品について

 本作は、満州事変から太平洋戦争へ突き進んだ大きな時代のうねりの中で、日本人でありながら中国の歌姫として数奇な運命を辿った“李香蘭”こと、山口淑子さんの半生を描いた作品です。
 創作にあたっては、浅利をはじめとする主要スタッフたちが中国へ行き、李香蘭が少女時代を過ごした撫順や、スクリーンデビューした満映の跡地、終戦後裁判にかけられるまで収容されていた施設などを実際に取材し、時代考証も綿密に行いました。衣裳は可能なかぎり本物に拘り、無線電信の発信音や手旗信号なども、細部に亘って忠実に再現し、作品は創り上げられました。
 「李香蘭の人生だけを追うのではなく 彼女の経験した“時代”を描くことで、歴史的プロセスを明確にし、歴史の真実に迫りたかった」と浅利は語っています。
 初演は1991年、東京。翌年には、北京、長春、瀋陽、大連の中国4都市、97年にはシンガポールでも上演し、国際的にも高い評価を得ました。
 “昭和の戦争”とはどのようなものであったか。この作品には、今を、そしてこれからを生きる人たちが忘れてはならない大切な歴史が詰まっています。

浅利慶太の想い

 演出家・浅利慶太は、「悲劇が繰り返された“昭和”という時代を決して風化させてはいけない」という思いから、1991年の初演以来、この作品を上演し続けてまいりました。2015年に活動の拠点を浅利演出事務所に移した後も、「戦争を経験した者として、あの戦争を語り継ぐ責任がある」と上演を重ね、本作が最後の演出作品となりました。
 稽古場で浅利は、俳優たちを集めては自らの戦争体験とともに、「昭和の戦争は凄まじい犠牲を伴ったけれど、あの時代があって、今がある。戦争に対して観念的になってはならない。観た人に戦争の悲劇を実感していただけるように、気分や感情で芝居するのではなく、時代を生きろ。」と語っていました。
 戦後70年以上が経過し、若い世代にとって戦争は遠い過去の出来事となりつつあります。だからこそ私たちは浅利の想いをしっかりと受け継ぎ、『ミュージカル李香蘭』を上演し続けたいと考えています。

ものがたり

 中国に生まれ育った山口淑子は十三歳の時、日中友好の夢を父親から託され、中国人である李将軍の養女となり「李香蘭」の名前をもらう。そして、類まれなる美貌と歌の才能を認められ、満州国映画協会(満映)から中国人女優としてデビューし、中国はもとより、日本でも熱狂的に迎えられる大スターとなった。その人気を日本軍の宣伝に利用された彼女は、終戦後、中国で祖国反逆者の罪で軍事裁判にかけられてしまう。「夜来香」「蘇州夜曲」「何日君再来」などの名曲のメロディと共に、昭和という激動の時代を綴る。

公演について
公演スケジュールおよびチケットなどの詳細は順次発表いたします
どうぞお楽しみに